人と鹿が共生する奈良公園。この自然豊かな公園の生態系は、地域とつながった取り組みによって守られてきました。
しかし、近年さまざまな問題によって、鹿の生息環境が脅かされています。
未来に向けて、私たちは何ができるのでしょうか。
奈良公園の鹿の交通事故
鹿たちが直面しているさまざまな危機のひとつに、車との交通事故があります。
奈良公園を走行される際には、慎重かつ安全運転をお願いいたします。
交通事故の発生状況は、以下の通りです。
今年の交通事故発生状況
(2024年3月31日現在)
2023年 | 2024年 | ||||||||||||
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4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 合計 | |
交通事故発生件数(件) | 5 | 0 | 5 | 6 | 4 | 8 | 15 | 5 | 4 | 4 | 5 | 1 | 62 |
前年比 | ±0 | -1 | +3 | +3 | -4 | -1 | +3 | -7 | -1 | +1 | +3 | -2 | -2 |
2023年 | 2024年 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 合計 | |
交通事故死亡頭数(頭) | 2 | 0 | 3 | 1 | 2 | 4 | 3 | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 | 19 |
前年比 | -2 | ±0 | +3 | -1 | -2 | +1 | -5 | -6 | -1 | -2 | +2 | -2 | -15 |
参照:交通事故多発地帯マップ
時間帯別 交通事故発生件数
ドライバーの皆さまへのお願い
- 奈良公園を自動車で走行するときは、昼夜を問わず制限速度40km/h以下で慎重な安全運転をお願いします。
- 交通事故を起こしてしまった場合や、傷ついている鹿を発見した場合には、至急の通報をお願いします。迅速な通報連絡により、大切な鹿の命を助ける可能性がとても高くなります。
※交通事故の場所や時間を調べ、対策に役立てています。 - 万が一、事故の当事者となってしまっても、故意でない限り罪に問われることはありませんので、すぐに情報をお寄せ下さいますようお願いいたします。
鹿の緊急連絡について
『一般財団法人 奈良の鹿愛護会』は、24時間体制で鹿の救助・救出をおこなっています。
鹿の交通事故や、ケガをした鹿、様子のおかしい鹿を見かけられた際には、下記連絡先にご連絡ください。
「奈良のシカ」と人のトラブル
鹿たちの生息地である奈良公園は、奈良市の町と人々と密接な関係のなかで共生しています。
しかし、近年、私たちの生活スタイルなどの変化に伴い、鹿の生息環境の悪化が心配されています。
鹿の生活とのトラブル
鹿たちは、その生態から季節によって人とトラブルとなることがあります。
特に、高齢の方や小さなお子さん連れの方は、鹿と適度な距離をとる、鹿の様子を観察するなどの注意が必要です。
出産・子育て期
5月~7月上旬までは鹿の出産、子育て期です。メス鹿は、出産前後に神経質になることがあります。
鹿の恋の季節
9月~11月頃は鹿の恋の季節(発情期)です。特にオス鹿は、非常に気が荒くなるために角のあるオス鹿や、すでに角を切ってあるオス鹿にも決して近づかないでください。
関連リンク:行動・生態
間違った餌やり
鹿はシバを主食とし、ほかに木の実(ドングリ)・木の葉などを食べる草食動物です。
安易な気持ちで人の食べる物を鹿に与えることは、鹿にとって有害になることもあります。
人間の食べ物(パン、お菓子、野菜など)や紙類を食べさせると、中毒やお腹を壊してしまうなどの病気の原因となり、時には死に至ることもあります。
皆さまへのお願い
- 人の食べ物(お菓子、野菜、お弁当など)を与えないでください。残飯、砂糖や香辛料の入ったお菓子類を食べると、胃腸障害や虫歯の原因となります。
- 奈良公園周辺部で間違った餌やりが、鹿を不幸なトラブルに巻き込みますので、与えないで下さい。
- 鹿せんべいは、鹿の主食ではありませんが、鹿に安心な「おやつ」です。
(鹿せんべいには、香辛料、砂糖は一切入っていません。またこの売上金の一部は、保護活動に使われます。)
関連リンク:広報啓発 > 注意事項
生息環境の悪化~ゴミ問題~
奈良公園には、鹿の誤飲事故を防ぐためにゴミ箱が設置されていません。
パンフレットなどの紙類、ポリエチレン袋などをむやみに捨てると、食べ物と勘違いして食べてしまいます。
その結果、これらが胃の中にたまり、さまざまな病気の原因となります。
大切な鹿の生息環境を守るために、ゴミをむやみに捨てたりせず必ず、持ち帰るようにして下さい。
また、気がついたら、ゴミもできるだけ拾うようにしてください。
悪質なイタズラ
奈良公園に生息する鹿は、国の天然記念物に指定されている野生動物です。よく慣れていますが、飼育動物やペットとは違います。
普段は、とてもおだやかでおとなしい鹿も、特に悪質なイタズラには攻撃してくることもあります。
イタズラを嫌がるのは、人も鹿も同じです。
“追いかける”、“じらす”、“たたく”、“結ぶ”、“さわる”、“鹿の背中に乗る” など、絶対にやめていただくようお願いします。
※悪質な場合、文化財保護法違反で罰せられることがあります。
※鹿の写真を撮影する際もマナーやルールを守り、鹿たちの自然な姿を撮影するように心がけてください。
観光客とのトラブル
奈良公園には、貴重な歴史的文化遺産が多く点在しています。この奈良公園は、生息する鹿にとっても重要な場所です。
しかし鹿たちは生息する中で、さまざまな出来事に遭遇しています。
例えば、
- カバンやバッグ、カメラ、水筒などに引っかかる
- パンフレットやチラシなどの紙類を食べてしまう
など
このように、思いも寄らないことが起こっています。
しかし、鹿たちはわざと引っかけたり、紙類を食べているのではありません。偶然が重なり合うことで、お互いが気づいたときにはトラブルになっているのです。
鹿は、人の色々な物に対して興味を持ちますので、厳重な管理をお願いします。
「奈良のシカ」と犬との関係
鹿は、大変に臆病な性格です。ニオイなどで飼い犬等の存在を感じると、大変怖がり警戒します。また犬の鳴き声などにはとても敏感に反応します。
ひとたび、犬に吠えられたり追いかけられたりすると、すぐにその場の脅威から逃れるため、突然走り出します。
その結果、道路への急な飛び出しや衝突事故など、さまざまなトラブルにつながります。
奈良公園は、“鹿の生息地”ということを決して忘れないで下さい。
鹿苑に保護される鹿たち
保護施設「鹿苑」には、さまざまな理由によって保護収容される鹿たちがいます。
ここでは、ケガや病気による治療や鹿と人とのトラブル防止を目的とした一時保護の鹿たちや、事故やケガなどで奈良公園に復帰困難な鹿たちが暮らしています。奈良公園で元気に暮らす鹿と、鹿苑で暮らす鹿は、同じ「奈良のシカ」たちです。どちらの鹿の暮らしがよいか、共生していく中での大きな課題のひとつといえるでしょう。
課題への取り組み
奈良の鹿愛護会では、天然記念物「奈良のシカ」を守るために、毎日巡回パトロールを行い、皆様からの通報連絡により傷ついた鹿たちを保護する活動を行っています。
また、奈良公園に訪れる観光客などに対して、交通事故防止を呼びかけるなど、普及啓発活動を行っています。
全緊急出動回数
鹿のために私たちができること~鹿との共生を目指して~
奈良公園内に生息する鹿は、国の天然記念物「奈良のシカ」に指定され、都市の近くで人々が自由に野生動物に親しめる他に類のない非常に貴重な存在です。
しかし、長い歴史の中で、鹿はその時々の社会情勢の影響をうけながら生息してきました。その結果、鹿たちは再々存亡の危機にさらされてきました。近年では、交通事故をはじめ、食べ物の問題など、鹿の生息環境は悪化の一途をたどり、鹿たちが傷ついています。
“私たちにできること”、それは、鹿の現状をきちんと知ること、鹿の生態を理解して正しいルールやマナーで接することです。
それが鹿と人とのトラブルを防ぎ、なおかつ鹿だけが我慢をしない共生の第一歩につながるのです。
「奈良のシカ」は、奈良公園を訪れる方々をはじめ、地域の皆様からも大切に愛されている奈良公園のシンボルです。この鹿たちを守りながら、奈良公園の生態系を保全して、未来に引き継いでいくこと。それが、人と鹿が共生する理想の環境ではないでしょうか。
ぜひ一人ひとりが考えてみてください。