令和5年12月28日
奈良市保健所長 鈴村 滋生 様
一般財団法人奈良の鹿愛護会 会 長 大 川 靖 則
平素より、当会の奈良の鹿の保護事業にご指導を賜り厚くお礼申し上げます。
令和5年11月24日付け奈健衛第440号で頂きました指導書に対する是正対策の状況は下記のとおりです。
ご指摘頂きました鹿の管理・治療方針の策定につきましては、県・市の指導を仰ぎ、改善を図っていく所存です。
つきましては、当会へのなお一層のご指導・ご鞭撻を頂きますよう、よろしくお願いいたします。
記
1.飼養環境の改善について
1)新鮮で清潔な水を常時与えるよう対策を行うこと。
回答)
・ 現在、1日3回の点検を実施し、汚れている場合は、水栓を抜き水の全部交換をして
います。
今後は、特に鹿が給水場に直接入ってしまう暑い季節の対応等について、給水場を増
設する方向で県・市の指導を仰ぎ対応します。
2)施設内の排泄物の清掃を毎日行い、飼養環境を衛生的に保つこと。
回答)
・ 毎日、8時半から11時の間に施設内の清掃を行い、餌場周辺の糞と余った餌を撤去し
て衛生環境を整えています。午後の清掃については現在の人員では実施困難な状況です
が、今後、増員の可能性を含めて県・市の指導を仰ぎ対応します。
3)動物の排泄物と食餌が混在した状態としないこと。
回答)
・ 現在は、優位個体による食餌の独占を防ぐため、ドングリやキューブを地面に分散し
て直まきしています。
また、過去に職員が角で刺される事故が発生したことから、餌場周辺の清掃に際し、
ドングリやキューブを地面に直まきし、角ジカを引き離すことにより、職員の安全を確
保しています。
今後は、地面の排泄物の清掃後、直まきをする等の工夫を考えていますが、労力がか
かることから、県・市の指導を仰ぎながら、対応します。
2.現状で衰弱している個体の有無を把握すること。
把握した個体についての治療や飼育に関わる方針をたてること。
回答)
・ 衰弱した鹿は職員が朝の清掃・給餌の時間に異常がないか以下を目視で確認していま
す。
①群れから離れている鹿はいないか
②食欲や反芻、糞の形状などの異常がないか
③被毛、姿勢、よだれ、目やに、咳などの異常がないか
・ 現在は、重症化した個体に対して、獣医による点滴を行っていますが、野生の大型獣
に対する治療方針等がないことが課題となっています。
今後は、①②③に該当する個体については獣医師が治療を実施し、また、適切な治療
方針や給餌内容等について、県・市の指導を仰ぎながら対応したいと考えています。
3.今後、衰弱させないために以下の方針並びに計画を講じること。なお、鹿の種や反芻動物
としての特性、性差を考慮すること。
1)収容後間もない鹿の管理対策(給餌・給水・環境)
回答)
・ 現在は、スペースに余裕がある場合には、仮囲い柵の静かな広いスペースに入れて収
容後間もない鹿の管理を行っています。約3000㎡に17頭ほど収容しており(R5.12時
点)、十分な給餌・給水・環境が出来ています。
しかし、4月~7月は妊娠鹿や子鹿の収容、8月~10月は角鹿の収容で、鹿苑には現在
の2倍の600頭ほどを収容せざるを得ない状況になるので、仮囲い柵のスペースを確保
できるかどうかが課題です。今後は、県・市のご指導を仰ぎたいと考えています。
・ また、現在は収容時の鹿の診断や経過観察を十分に実施できていない状況ですので、
県・市に対して、外部獣医の巡回指導や監察派遣等の指導を仰ぎたいと存じます。
2)収容後、鹿が衰弱しないための対策(給餌・給水・環境)
回答)
・ 現在は、弱い個体については、一時収容柵に隔離し消化の早いキューブを与えると共
に日常観察を強化しています。今後、報告記録台帳を作成し、獣医師が鹿の衰弱の予防
を図ります。
3)収容後、鹿の体調不良の早期発見に努めること
回答)
現在、下記の通り牡鹿の小群分けを実施しています。
①大型の強い鹿(38頭)
②中程度の鹿(42頭)
③収容後人に慣れない鹿(17頭)
④弱い鹿(27頭)
・ 鹿の頭数が過密状態になることにより、日除け・雨除けの面積が不足し、反芻動物の
横臥が妨げられることがあるので、暑い時期における仮設の日除け等の設置を増やす方
向で、施設所有者である県と相談します。
・ 今後は、日常観察強化のための報告記録台帳を作成しますが、鹿苑の野生の鹿にどこ
までの世話や治療が必要かの指針がない状況ですので、県・市のご指導を仰ぎながら、
異常を示した個体の早期発見、隔離、治療についてのマニュアルを作成します。
4)衰弱個体を発見した際の適切な保護体制(連携、給餌、環境)
回答)
・ 現在、衰弱し、重症化した個体のみ、獣医による診断を行っているが、衰弱個体全部
についても、診断をする必要があります。野生動物に対する動物福祉の観点からどのよ
うな治療や医療的処置が必要なのか、高い知見を持った外部の獣医師からの指導・連携
が必要であると判断しています。今後、県・市のご指導を仰ぎたいと考えています。
4.以下について、関係機関と協議し、その改善に努めること。
1)寒暑風雨の待避場所を増やすこと
回答)
・ 収容頭数が過密となった場合は、待避場所が不足するので、仮設の日除け・雨除け等
の待避場所の増設を行う方向で、施設設置者の奈良県に相談し、検討します。
2)鹿の収容対策(鹿の健康および安全を保持した収容方法の検討)
回答)
・ 鹿の健康および安全の保持には、過密状態の解消が必要であるため、以下についての
指針策定を県・市にお願いいたします。
①増えすぎた鹿の問題解決のための、C地区の鹿の取り扱い等の検討
②当会が担当する鹿の健康と安全についての対策を具体的にご教示いただき、今後は行
政の査察等により業務の正当性を確保して参りたい。