交通事故で2本肢を骨折した鹿たち

毎年、秋になると鹿の交通事故が増えてきます。理由の一つは、発情期に入って雄鹿が活発に動くようになるから。そしてもう一つは子鹿が大きくなって、活動的になるから。

現在、鹿苑では両前肢を骨折した子鹿、両後ろ肢を骨折した子鹿、前肢と後ろ肢を1本ずつ骨折した雄鹿が治療を受けています。

両前肢を骨折した子鹿。重症にもかかわらず、鹿せんべいはよく食べています。

両後ろ肢を骨折した子鹿。残念ながら具合がよくありません。

交通事故で右前肢と右後ろ肢を骨折した雄鹿。この雄は、元気がなくエサをほとんど食べません。

鹿の交通事故が多いのは、県庁前から近鉄奈良駅へ続く道、大仏殿交差点から飛火野に向かう南北の道です。それ以外に転害門周辺の道などでも鹿は車に轢かれています。特に日没後、鹿が見えにくくなる夜間が要注意です。

鹿は、一頭が道を渡ると次々別の鹿が後に続く習性があります。ドライバーのみなさん、鹿を見かけたら、スピードを落として道路わきに鹿がいないか注意しましょう。

それから鹿せんべいを道沿いで与えている人を時々見かけますが、道沿いで鹿に鹿せんべいを与えるのは、どうかやめてください。鹿は鹿せんべいが大好きなので、鹿せんべいに夢中になって車の存在に気づかないことがあります。鹿の交通事故を防ぐためにもみなさんのご協力、よろしくお願いします。

実習生募集中

一般財団法人奈良の鹿愛護会では、奈良公園内のシカの保護・治療活動に参加する実習生を募集しています。当会は、国の天然記念物である奈良の鹿の保護育成を目的として1934年に設立された団体であり、負傷・疾病シカの保護・治療、シカ愛護の啓発活動、頭数調査をはじめとした調査研究等の活動を実施しております。

実習生には、専属獣医師といっしょに鹿苑内に保護しているシカの世話や治療を中心に携わってもらいます。

実習の内容

  1. 傷病・疾病シカの治療補助、検査補助、剖検補助
  2. 鹿苑内で保護しているシカの世話
  3. その他、奈良の鹿の保護に関する付随業務

獣医師より一言

治療する症例で圧倒的に多いのは、交通事故により骨折した鹿です。それ以外の症例は、外傷や原因不明の衰弱などがあります。奈良の鹿は野生動物であるため、鹿の治療はこれまでの治療・研究の蓄積がある小動物/大動物臨床と比べるとだいぶ勝手が違います。しかし、これだけ多くの野生の鹿の治療を行っている施設は国内外に存在しません。学校で野生動物の診療に携わる機会がほとんどないことから、野生動物の保護・治療に興味がある学生さんには、ここでしか体験できないことをたくさん吸収してもらえれば幸いです。

<対象>

獣医学、動物看護学を学ぶ大学生・大学院生

<期間>

2024年8月1日(木)~9月30日(月)までの間の土日祝日を休日とした連続10日間

実習希望者と個別相談の上、決定

<時間>

午前8時30分~午後4時(1時間程度休憩)ただし、業務の都合により多少前後することがあります。

<申し込み期限>

2022年7月31日(水)まで

<申し込み方法>

履歴書と志望動機を郵送またはメールで送ってください。

住所:630-8212 奈良市春日野町160番地1

メールアドレス:info@naradeer.com

一般財団法人奈良の鹿愛護会 丸子宛て

<注意事項>

実習は無報酬とします。

交通費、昼食代、宿泊費等は各自で負担してください。

保険は各自入るようにしてください。

前肢を骨折した雌鹿と子鹿

今年の3月22日に奈良公園内で交通事故に遭遇し、右前肢を骨折した雌鹿を保護しました。折れた前肢は骨が粉々に砕けており、一時は右前肢を断脚することを検討するほど重症でした。幸い、右前肢は残すことができ、まだ折れた骨の断片が見えていますが、ゆっくり治ってきています。↓

この雌鹿が5月7日に子鹿を出産しました。妊娠鹿が交通事故で重傷を負った場合、流産または死産になることがよくあります。ですが、この子鹿は無事でした。産まれた直後は、物陰に隠れて寝ていることが多かったのですが、1週間くらいすると活発に動き回るようになりました。↓今日も親鹿が他の鹿といっしょにエサを食べている間、一頭で探索しています。

この子鹿と母鹿がいっしょにいるところをほとんど見たことはありません。わりと放任主義のお母さん鹿ですが、子鹿が元気に育っていることからすると、人が見ていないところできちんと子育てしているのでしょう。

同じように奈良公園でも母鹿といっしょにいない子鹿をよく見かけます。親鹿といっしょにいないと心配する人がおりますが、こういう場面では子鹿をそっとしておいてあげてください。時間が経てば母鹿が子鹿を探しにやってきます。それから生まれて数日以内の子鹿は物陰でじっとしていることが多く、あまり動きません。それを弱っているのでは?と勘違いして、子鹿に近づく人もいらっしゃいますが、生まれて数時間以内に立ち上がることができる子鹿といえど、生後1週間ほどは大人の鹿のように動き回りません。逆に子鹿の周りに人がいると、母鹿が子鹿の世話をしにやってきても、子鹿に近づけません。

鹿の生態をご理解いただき、そっと見守ってあげていただきますようお願いいたします。

2本肢を骨折した鹿達のその後

奈良公園で交通事故に遭遇した鹿の中には、2本肢が折れてしまった鹿たちがいます。2本の肢が折れてしまうということは相当強い衝撃が鹿の体に加わっているということです。こういった鹿たちは交通事故の後どうなっているのでしょう?

この雌鹿↓は両前肢を開放骨折(骨が皮膚から突き破っている状態)でしたが、なんとか回復し、歩けるようになりました。骨折したところは曲がってしまいましたが、自分の体重を支えることができます。

この雌鹿↓は右前肢と右後肢を骨折しました。残念ながら、再び立ち上がることなく死亡しました。

この雌鹿↓は両前肢を骨折し、溝から出られないという通報を受けて保護しました。現在治療エリアで経過観察中です。保護したときは歩くことはできませんでしたが、今は軽傷だった左肢と後肢に体重を乗せて、器用に歩くことができます。

骨折した部分がくっついて歩けるようになれば、奈良公園に帰ることができます。少し肢の形がほかの鹿と違っていても、日常生活に支障ありません。こういう鹿を見かけたら、「交通事故に遭ったけど、無事回復したんだな」と見守ってください。

鹿苑内ボランティア募集

鹿苑(ろくえん)に保護されている鹿の治療や世話、鹿苑内の掃除を手伝ってくださるボランティアさんを募集しています。

★ 活動内容:鹿苑に保護されている鹿の世話、治療補助、鹿苑内の清掃

医療関係者歓迎。シカを乗せた担架を運ぶことができる人(最低20キロ程度を持ち上げることができる人)。野外での活動が多いので、体力のある人歓迎。

*鹿苑内の清掃活動のみ希望も可。

★ 募集人数:5名程度(募集人数に達した時点で募集を終了します)

★ 活動日時:8:30~12:00 13:00~16:00。曜日は応募者と相談の上、決定。

★ 交通費:1回につき一律1000円支給。

★ 応募条件:鹿サポーターズクラブの会員であること。会員でない場合は入会してください。年会費3000円が必要です。(連絡先 0742-93-8100)

★ 応募の流れ

① 志望動機が書かれた履歴書を奈良の鹿愛護会まで郵送またはメールで送付。

② ボランティア説明会・鹿サポーターズクラブ説明会に参加(日時は相談の上決定)。鹿サポーターズクラブに未加入の場合は入会。

③ お試しボランティアとして参加。

④ 正式にボランティアとして活動(4月~6月の間に4回)。

⑤ 継続するかについて相談。

お問合せ先・応募先:一般財団法人奈良の鹿愛護会 担当 丸子まで

電話 0742-22-2388(平日9:00~17:00) メール info@naradeer.com

皆様の応募、お待ちしております。

奈良公園に復帰した雄鹿

今年4月に県庁前の道路で交通事故に遭い、前肢と後肢を1本ずつ骨折した雄鹿が、12月6日に無事奈良公園に戻っていきました。

こちら↑が奈良公園に放す前の写真です。骨折の後遺症で肢を地面に着くときに右の前肢が少し曲がっています。また左の後ろ肢は右の後ろ肢と比べてかなり太くなっています。

見た目では、肢の形がほかのシカと違って見えますが、生活に支障はありません。交通事故に遭ったときより体も一回り大きくなりました。

このシカを県庁付近で見かけても、奈良の鹿愛護会へ通報せず、そっと見守ってください。非常にフレンドリーなシカなので、鹿せんべいを持って近づけば喜んで食べにきます。

このシカは幸い奈良公園に復帰が可能となりました。しかし2本骨折したシカの半分以上が死亡しています。

このシカがひかれた県庁前の道路では鹿が交通事故に遭って命を落としています。ドライバーのみなさん、道端や中央分離帯にシカがいないかよく注意しつつ、シカにやさしい運転、よろしくお願いします。

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秋の鹿セミナー

鹿の愛護月間中、奈良の鹿の交通事故を減らす取り組みの一環として、毎年恒例の鹿セミナーを開催します。今年は主に動物医療や野生動物保護活動に従事する人たちを対象としたセミナーです。このセミナーでは、獣医師が奈良の鹿愛護会で行っているシカの骨折治療について説明した後に、参加者のみなさんがシカの治療現場を間近で見ることができます。また質問コーナーも設けていますので、シカの治療について疑問がある方はこの機会にご相談ください。

テーマ:シカの開放骨折の治し方

対象:動物医療関係者、野生動物の保護活動に取り組む人たち

 日時:11月29日(水)午前10時~午後3時(休憩1時間)

 場所:奈良の鹿愛護会の会議室、鹿苑

募集人数:5名

参加費:5000円(会場でお支払いください)

お申し込み:メールで参加者名、ご連絡先、簡単な自己紹介を添えてお申し込みください。募集人数に達した時点で応募を締め切らせていただきます。

メールアドレス:info@naradeer.com

お問合せ:電話 0742-22-2388(平日 9:00~17:00まで)

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シカ用ミルク

日本ではシカ用のミルクは市販されていないため、これまでは生後まもない子鹿を保護した場合、母鹿に代わって子鹿を育てることはできませんでした。というのは、市販されているネコ用ミルクやヤギ用ミルクを子鹿に与えても、子鹿は嫌がって飲んでくれなかったからです。

しかし、アメリカでシカ用のミルクが販売されていることをセミナーに参加した人が教えてくれので、調べたところ、ニホンジカ(奈良の鹿)と同じくらいの体格のオジロジカの代用乳が売られていることがわかりました。

このとき偶然、奈良の鹿愛護会に医療用品を寄付したいという方が現れました。オジロジカの代用乳を購入していただけないか話してみたところ、快諾してくださいました。またこのオジロジカの代用乳はアメリカの販売会社から直接購入できなかったのですが、現地の獣医さんの協力で日本に送ることができました。

こちら↑が実際の粉末状のシカ用ミルクが入った容器です。粉末をぬるま湯で溶かして子鹿に与えます。

このシカミルクが日本に着く直前に、交通事故で立ち上がることのできない子鹿が保護されました。そこでシカミルクが届くと、早速この子鹿に与えてみることにしました。

こちら↓が子鹿を保護して4日目にシカミルクを与えている様子です。元気はありませんが、シカミルク自体を嫌がる様子はほかの動物用と違って見られません。

こちら↓は数日後の様子です。保護当初は立ち上がることすらできなかったのですが、なんと走り回るようになりました!シカミルクを与えているときは、人が押さえなくてもおとなしく飲んでいます。きっとおいしいのでしょう。

ある程度シカミルクを飲んだ後の様子↓です。リラックスして座っています。子鹿の周りにある枝葉は関東の方がわざわざ宅急便で送ってくださったものです。

この子鹿はおそらく生後2~3か月経っているので、草や枝葉も食べることができます。もし家で草刈りや庭木の剪定をした方がいらっしゃったら、この子鹿にもってきていただけると助かります。交通事故に遭って一時は助からないと思っていた命ですが、なんとか無事奈良公園に放す日が来るよう願っています。

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交通事故が増えてきました!

5月6日と24日のブログで紹介した前肢と後ろ肢を骨折した雄鹿ですが、その後ゆっくりと回復し、骨折していた右の前肢を地面に着けて歩くことができるようになりました。左の後ろ肢は立っているときは軽く地面に着けていますが、歩くときは挙げています。

こちら↑が現在の様子です。折れてしまった左の後ろ肢は変形してしまいましたが、なんとか断脚を免れることができました。時間はかかると思いますが、左の後ろ肢を地面について歩けるようになれば、奈良公園に戻すことができます。

こちら↓は6月23日に交通事故に遭い、両方の後ろ肢を骨折した雄鹿です。

この鹿は残念ながら交通事故で左後ろ肢の蹄を失ってしまいました。しかし、そんな重傷を負っても自分の肢で懸命に歩いています。このまま元気になってくれるといいのですが・・・

最近、鹿の交通事故が増えてきています。先日、両前肢を骨折した子鹿、交通事故で死産となった雌鹿が相次いて命を落としました。

これまで鹿苑に保護されていた子鹿が奈良公園にデビューしたことから、子鹿の交通事故も増えてくるかもしれません。

奈良県庁と博物館の前の広い道路、県庁東交差点付近、飛火野周辺、春日大社へ向かう道は交通事故が起きやすい場所です。ドライバーのみなさん、道路の横から鹿が急に飛び出してくるかもしれませんので、スピードを出しすぎず安全運転でお願いします。

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実習生募集のお知らせ

一般財団法人奈良の鹿愛護会では、奈良公園内のシカの保護・治療活動に参加する実習生を募集しています。当会は、天然記念物である奈良の鹿の保護育成を目的として1934年に設立された団体であり、負傷・疾病シカの保護・治療、シカ愛護の啓発活動、頭数調査をはじめとした調査研究等の活動を実施しております。

実習生には、専属獣医師といっしょに鹿苑内に保護しているシカの世話や治療を中心に携わってもらいます。

実習の内容

  1. 傷病・疾病シカの治療補助、検査補助、剖検補助
  2. 鹿苑内で保護しているシカの世話
  3. その他、奈良の鹿の保護に関する付随業務

対象

獣医学部に所属する大学生・大学院生、動物専門学校に所属する学生

期間

2022年8月1日(火)~9月29日(金)までの間の土日を休日とした連続10日間 実習希望者と個別相談の上、決定

時間

午前8時30分~午後4時(1時間程度休憩) ただし、業務の都合により多少前後することがあります。

募集期限

2022年7月31日(月)まで

申し込み方法

履歴書と応募理由を郵便またはメールで送ってください。

住所:630-8212 奈良市春日野町160番地1

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一般財団法人奈良の鹿愛護会 丸子宛て

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