ホーム 上へ

鹿からのメッセージ
戻る ホーム 上へ 進む 

ホーム
上へ

 
 奈良といえば鹿!!
 手厚く保護され、幸せに暮らしていると思われていませんか?
 しかし、人たちに知られていない鹿たちの厳しい現実があります。
 ここでは少しでもそのことを知っていただくためのページです。

      共生のなかで生まれる問題点   

 鹿の死亡原因

 奈良公園一帯では、約1000頭の鹿たちが生息していますが、毎年約300頭前後の鹿が死亡しています。
 死亡原因はさまざまですが、ここでは大きく分けて2種類の原因(疾病・交通事故)を取り上げます。


@疾病(病気)

  奈良公園で、ゴミ箱を探されたことはないでしょうか。?
  以前は設置されていましたが、鹿がゴミをあさったり、ゴミ箱の蓋が首にはまったりすることがあるので、今ではほとんど見かけなくなりました。
  ほとんどの来訪者の方は、マナーを守り、ゴミを持ち帰って頂いていますが、心ない人達によるゴミのポイ捨てが無くなることはありません。
 では、そのゴミを食べた鹿はどうなるのでしょうか?
 下の写真は、オス鹿(5才)の胃内から出てきたビニール塊(5s)です。
 このように、石油製品製のゴミは消化されず、どんどん胃内にたまっていきます。
 胃内にゴミが滞留することにより、鹿は食べ物を食べることができなくなり、その
結果栄養不良で死亡します。

                 

ゴミ箱のフタが首にはまった鹿

胃内から出てきたビニール塊】

 

 
      
  では、ビニール以外のものだったら何を食べてもいいのでしょうか?
  鹿は草食動物ですので、本来食べることのない肉類や甘味料等は消化することができません。
  野菜も少量なら大丈夫なのですが、たくさん食べると硝酸塩中毒を起こし、死亡してしまいます。
  また、パンや米、豆科植物などを与えると胃鼓脹症で死亡します。
  鹿たちは、奈良公園に自生する植物(シバや木の実など)を主食として生息しています。
  鹿には、「鹿せんべい」以外の食べ物を与えないようご協力ください。(※鹿せんべい) 
  また、心ない人からいじめられたり、カメラを写そうと追いかけると、ストレスで命を失うこともあります。
  

 
 私たちは、鹿の生態を知らないまま鹿に接し、誤った行為により鹿を苦しめている場合があるのです。

 

A交通事故

 公園内には国道、県道、公園道などの複数の道路があり、鹿の交通事故発生件数は、毎年150件前後に及びます。
 鹿たちが危険な道路を横断しなければ交通事故にも遭わず安全なのでは?と思われることでしょう。
 古来から奈良の鹿のホームレンジは、現在の近鉄奈良駅付近〜春日山一帯
で、特定の休み場、採食場、泊り場をもち、ほぼ決まったルートに 沿って移動し、行動圏の年周期的変化はほとんどありません。

  しかし、社会情勢の変化により鹿の生息地である奈良公園に、次々と
道路が作られ、更に道路が拡幅されています。
 鹿の行動圏にある日突然道路 ができ、「ここを通ったらキケン!」だとは、鹿たちは到底理解することができません。
 鹿たちは、大切なエサ場を求め、毎日何度も道路を横断する必要があるのです。

 

【R169号線】

【R369号線】

  さらに、交通事故の原因として、発情期(9月頃〜11月下旬頃)には、オス鹿はメス鹿をテリトリーに囲い込むため、メス鹿を追いかけ、突然道路にとび出すことがあります。
 また、子鹿は成長するにつれ、行動範囲が拡大し、交通事故に遭遇する確率が高くなっていきます。
 その他、犬に追いかけられたり、人に追われるなど様々な原因により、奈良公園内での交通事故は発生しています。

 では、事故が発生し、傷ついた鹿はどうなるのでしょう?
 (財)奈良の鹿愛護会では、24時間体制で保護活動を行っています。
 夜間でも通報があれば即座にスタッフが鹿を救助し、保護施設である「鹿苑」に収容します。 
 獣医が治療手当を行い、怪我が完治すれば、公園に解放します。

 しかし、脚を切断などの重症の鹿たちは自然界では暮らすことができないため、生涯を「鹿苑」で飼養されます。
 残念なことですが、治療手当のかいもなく死亡する鹿たちもたくさんいます。

 【事故に遭い、後ろ足を失ってしまいました。 】

 
 奈良公園内では、少し足の不自由な鹿を見かけることがありますが、それは事故等で骨折した後、骨も固まり、自然の中で元気に暮らしている鹿たちです ので安心してください。  
 公園来訪者の方より、目前で悲惨な交通事故に遭遇し、傷心のお気持ちを伝えるお電話やメールなどを当会に寄せられます。
 安全な鹿たちの生息環境を保全するために、ぜひ奈良公園内では、徐行運転を心がけてください。
 若しくは公園外辺の駐車場をご利用いただき、自然と鹿にやさしい徒歩での公園散策にご協力ください。
 また公園を利用されない場合は、できるだけ公園を迂回して頂きますようお願いします。

 もし、みなさんが交通事故の現場を見かけたり、ケガをしている鹿、様子がおかしい鹿を見かけましたら、ご連絡ください。
 スタッフが、急いで現場まで駆けつけます。    

 

 

鹿 害

 鹿害(ろくがい)とは、鹿がおこす被害のことです。
 しかし、これだけではすべて鹿が悪いように思われるかもしれません。
 では、なぜ鹿害が起きてしまうのでしょうか?

@食害

 奈良公園の草刈りは、鹿たちが毎日草を食むことにによって景観が保たれています。
 この鹿による経済効果は数億円にも及び、奈良は鹿によって大きな恩恵を受けています。

 

 
 しかし、公園には柵のような囲いがなく、鹿はどこまでも行動範囲を広げ、市街地の田畑を食い荒らすことが食害です。
 鹿の「食べる」という行動が、人間にとって「益」にも「害」にもなるのです。
 公園外辺部で鹿に食べ物を与えると、その場所に毎日鹿は通うようになります。
 益々鹿の行動範囲が拡大し、農地や家庭菜園、ガーデニングなどに浸入し、被害が発生します。  
 鹿も人間と同じで、一度おいしいものがある場所を覚えてしまうと、ずっと忘れることができません。
 また、公園に野菜くずや果物を持ち込み鹿に与えると味を覚え、市街地の畑等に植えてあれば食べてしまいます。
 (鹿にとっては、一方の人からはもらえるのに、こっちの人には食べるとしかられる・・・???)
 

 このように人が鹿を公園から引き出してしまうのです。
 それによってたくさんの市民の方々が農地を荒らされたり、庭の花を食べられるなどの被害を受けて、鹿が嫌われる原因になっています。
  こうなると嫌われる鹿を捕獲し、鹿苑に収容しなければならくなります。
 

 では、捕獲収容した鹿はどうなるのでしょうか?
 一度おいしいものを覚えると、なかなか忘れない鹿たち・・・
 もう公園内で暮らすことができず、鹿苑で生活をおくらなければなりません。
 鹿苑にはそんな鹿たちがたくさん収容されています。
 緑がいっぱいの、公園には戻れない鹿たち・・・
 

 「食べて良い場所と、いけない場所の区別なんて、
わからないゎ・・・!!」

 鹿苑の中は鹿の密度が非常に高いため、草木も生えず地面は糞であふれています。
 その中で生活している鹿たちには非常にストレスがかかります。
 また、互いのテリトリーに侵入するため頻繁にケンカが発生し、角で突かれて負傷したり、 死亡するケースもあります。

「やっと角が完成して、彼女にもてたいのに・・・ 」

 
 「奈良のシカ」は、国の天然記念物に指定されている貴重な文化財です。
 この鹿たちと市民と共生するためには、多くの方々のご協力がなければできません。
 どうか鹿の愛護のために、公園から市街地に出ていかないよう、また花や植木などは鹿に食べられないように、各自で工夫していただきますようご協力をお願いします。
 

 

A人身事故
 
食害とは違い、鹿が人に対して及ぼす被害のことを人身事故といいます。
 普段は公園でのんびりしている鹿が、なぜ人に危害を加えるのでしょうか?

・全身の毛が逆立つ
・前脚をトントン地面に突く

角丸四角形吹き出し: ・全身の毛が逆立つ
・前脚をトントン地面に突く
出産

 鹿にとって5月〜7月ごろは出産シーズン。
 公園内で子鹿の姿を見ることが多くなります。みなさんも愛らしい子鹿を見つけたら、ついつい近づいてみたくなりませんか?
 しかし、おかあさん鹿から見れば、私たち人間は我が子を襲う危険な生き物に見えています。
 そして母性愛の強さから子鹿を守ろうとして、私たちに攻撃してくるのです。
 そのために出産シーズンには人身事故が発生します。


母鹿が怒っているサイン!?

 その対策として、鹿苑という施設の中で出産できるよう、4月上旬頃から5月上旬ごろまで、妊娠鹿を約200頭ほど捕獲し 飼養しています。
 公園に解放するのは、子鹿がある程度大きくなって、人が近づいても母鹿が安心して見ていられるようになる7月中旬以降になります。
 しかし、鹿苑の中は安全ですが、草が生えない泥土のなかで子育てをしています。  
 本来、芝生や草むらの中など自然の中で出産するところを、鹿に我慢してもらっているのです。
 もし、公園で親子の鹿を見かけたら、このことを思い出してください。

「緑いっぱいの自然の中で産んで、育てたいわ・・・ 」

「森の中で遊びたいよ〜」


 


発情期

 秋の鹿は・・・
 ご存じの方も多い「鹿の角きり」
 これは発情期に入ったオス鹿が、私たちにとって危険だからと江戸時代から始められた伝統行事です。
 
 では、どうして危険なのでしょうか?
 発情期には、オス鹿は自分の子孫を残すため、メス鹿を獲得するためオス鹿同士が角を突き合わせ激しく闘争します。
 人がメス鹿にせんべいを与え、オス鹿の縄張りから引き出してしまうと、メス鹿を囲い込んでいるオス鹿は「恋人を取られた」と思って攻撃してきたり、真剣勝負のケンカ中でにらみ合っている二頭のオス鹿の近くを通るだけでもケンカに巻き込まれ、大けがをする場合があります。

「せっかくかっこよく伸ばした角なのに・・・
切らないでょ!!」
 

 公園で、角が切られている鹿を見られたことはないでしょうか?
 これも人身事故を未然に防ぐための防止策なのです。
 「鹿の角きり行事」は、古来の方法で10月中の3日間だけ開催しますが、すべてのオス鹿の角を切るわけではありません。
 角が完成する8月下旬頃から翌年の3月頃まで、満1才以上の角鹿を捕獲し、角を切って解放しています。
 その頭数は年間約250〜300頭にもなります。
 角を切ることは、人でたとえれば爪を切るようなもので、痛くはありません。
 しかし、オス鹿にとって、恋のシーズンに大切なシンボルを切られてしまっては・・・
 「メス鹿から相手にされなかったらどうしよう・・・」
 鹿にとってはとても残念なことですね。
 人と鹿の共生のため、鹿に我慢してもらっているのです。

 このように人身事故の原因は、鹿にとってみれば『子孫を残すため』というとても大きい理由があったのです。
 決して「人が嫌いだから」という理由で危ない目に遭わせようとしているのではないのです。そして『私たちと共生する』という理由で、鹿は大きな負担を強いられているのです。

共生に向けて、私たちに出来ること

 それは鹿の習性を理解し、正しい接し方をする事ではないでしょうか。
 それが最高の人身事故防止対策になり、なおかつ鹿ばかりが我慢をしないで良い奈良公園になるための第一歩になるのです。

 当会では、初めて鹿と接する方にもわかりやすいように、春秋シーズンの注意事項、鹿との接し方などについての看板を公園内に設置しています。
 それだけではなく、特に危険な出産期には「愛護週間」、発情期には「愛護月間」を設け、各シーズンに合わせた注意事項をたくさんの方に 知ってもらう広報活動を行っています。

 みなさんが奈良公園で鹿と接する時はこの事を思い出してください。

 

立て看板・注意放送    

 かわいそうな鹿が少しでも減るように、当会ではカーブで見通しの悪いところや、鹿が必ず横断する場所などに、さまざまな鹿の飛び出し注意看板を設置しています。

 また、広報車で注意放送を流しながら公園内を巡回し、たくさんの方に気をつけてもらえるように日々活動をしています 。
 

 

 

「美しい自然とシカが生きるまち・なら」を

                                       未来につなぐ・・・
   
 

  「人と鹿の共生」という永い歴史を振り返ると、鹿は人々に翻弄されてきました。
 過去には、鹿を殺すと死刑になっていたほど鹿が過剰に保護されていた時期や、逆に、鹿が密猟され激減してしまった時期など、その時代時代によって様々な問題がありました。

 

 


人が鹿にもたらした悲劇…

 最後に「人と鹿」の共生について考えたいと思います。
 その前に、みなさんは「白ちゃん」と呼ばれていた鹿や、白い鹿がいたことをご存じですか?
 

 

 
★白ちゃん★

 1954年(昭和29年)額の真ん中に真っ白い毛をつけた子鹿が誕生しました。
 まるで、白い王冠をかざしているように見えるその子鹿は、日本中から愛称を募り、「白ちゃん」と呼ばれるようになりました。
 人にはとっても愛されていましたが、鹿たちからは変わった姿なので相手にされていませんでした。
 しかし8年目にしてようやく待望の赤ちゃんを授かり、愛情いっぱいに育てていたのですが、交通事故で大切な赤ちゃんを奪われてしまいました。
 わずか2週間ほどの幼い命でした。
 それ以降白ちゃんは車に対し、とても攻撃的になってしまいました。
 白ちゃんは 毎日、子鹿のことを思い、悲しみに暮れる日々を過ごしていました。
 その後、白ちゃんは、一度も子鹿に恵まれないまま、白ちゃん自身も交通事故で死亡してしまいました。

 

   

        

 
★白鹿ファミリー★

 奈良の鹿には、神護景雲2年(768年)に春日大社の神様が白い鹿に乗って三笠山へ降りてきたという伝説があり、長い間、神様の鹿として大切にされてきました。
 しかし、鹿は本来茶色で白い鹿というものはいませんでした。
 それがこの10年ほどで白い鹿が4頭産まれ、その珍しさから白鹿を見かけた人は、白鹿の後を追いかけまわしました。
 そしてどの白鹿も人に対し恐怖心を持つようなりました。
 そして人に追われた白鹿は交通事故に遇い、その結果亡くなったり、一命はとりとめたのですが足を骨折してしまいました。
 このような惨事を防ぐ為にも愛護会が鹿苑の施設に収容し保護していたのですが、ある時、心無い人が柵の外から毒物を投げ込み、それを食べて死亡した白鹿もいます。
 また、人に追いかけられ、ストレスが原因で死亡した白鹿。
 さらに、逃げる途中に転んで足を骨折、治療のかいもなく足を切断した白鹿・・・様々な悲劇がありました。
 そして現在では、白鹿はわずか1頭しか生存しておらず、その1頭も鼻は曲がり足は切断され見るも無惨な姿で生きています。昔の神々しい面影は全くありません。



   そして今までのパネルを見ていただいたとおり、現在では鹿は人間の犠牲になっています。
白ちゃんや白鹿の話は、ほんの一例にしかすぎないのです。

 

  もともと鹿が住んでいた山を人間が切り開き都合のいいように環境や地形を変え、お互いの生息地 の境界線が無くなりその結果、人と鹿との問題が発生するようになりました。

    

★毎日のように鹿たちは犠牲になっています・・・

  

 ★人が捨てたゴミの摂取による病気や死亡

 
★鹿の生息地に人が踏み込むことによる
人身事故

 ★鹿の生活圏に家や道路ができたことによる農地被害交通事故

 

 はたしてこの現状は本当に「人と鹿」が共生しているといえるでしょうか?

 人間側の一方的な共生ではないでしょうか?

 動物が本来の生息地で繁栄し、人間に脅かされることなく自由に暮らしていけるためにも、生息地の環境の回復と維持、みなさんひとりひとりが環境を守ることを常に意識し、資源の無駄使いや環境に有害な物質を作らず、出さない努力をしていかなければいけないのではないでしょうか。

 「人と鹿」が共生をするためには、地域の方々や行政や企業、各種団体等の協力が必要不可欠であり、奈良市民が一丸となって考えていかなくてはいけないのです。

 未来を良くするのも悪くするのも私たちの責任です。今が未来につながっていくのです。
 奈良の鹿は市街地にいながら気軽にふれあうことが出来る野生動物という、世界的に見てもとても貴重な存在です。

 しかし現状では人間の便利さを追求するために多大なる鹿の犠牲があります。

 そのことをみなさんが理解し、人と鹿が今以上によりよい関係をつくり「人と鹿」の共生の方法を考え、素敵な奈良を次の世代に伝えていけるようスタッフ一同、心から願って活動しています。      

       

 

ホーム ] 上へ ]

この Web サイトに関するご質問やご感想などについては、info@naradeer.comまで電子メールでお送りください。
掲載されている内容、画像の転載はご遠慮ください。
Copyright (C) 2002 財団法人 奈良の鹿愛護会
最終更新日 : 2014/05/24